セールスイネーブルメントとは?概念やメリットについて解説!


営業組織強化や営業DXといった組織改革の方法を調査されたことがある方は、「セールスイネーブルメント」という言葉を見聞きしたことがあるのではないでしょうか。セールスイネーブルメントは近年注目されている営業組織への取り組みのひとつです。

新規の法人営業経験のある会社員220名を対象に実施した「セールス組織に関する調査」では、半数以上が「セールス・イネーブルメント」という言葉を認知し、7割以上が「自社に必要」「自社の営業課題を解決するために効果的」と回答しています。

​​​​​​​今後の成長が予測されている市場でもありますが、一部の企業様で「セールスイネーブルメントとは何か、概要や目的が分からない」また「どのようなメリットがあるのか分からない」と疑問に思う方もいるかもしれません。
 
今回の記事では、セールスイネーブルメントの定義や注目される背景、構築するためのステップを解説します。


目次[非表示]

  1. 1.セールスイネーブルメントとは?
  2. 2.セールスイネーブルメントが注目されている背景
    1. 2.1.セールスイネーブルメントの市場
    2. 2.2.働き方改革
    3. 2.3.商品の変化
    4. 2.4.リードの質と量が向上してきている
  3. 3.なぜ、セールスイネーブルメントが必要なのか?
    1. 3.1.セールスネーブルメントで見込める効果とメリット
      1. 3.1.1.【営業活動の効率向上】
      2. 3.1.2. 【売上増加】
    2. 3.2.セールスイネーブルメントと人材育成の違い
  4. 4.セールスイネーブルメント構築の4つのステップ
    1. 4.1.営業データの収集と整備
    2. 4.2.セールスイネーブルメント構築を担う人材のアサイン
    3. 4.3.トレーニングプログラムの開発
    4. 4.4.PDCAサイクルの策定
  5. 5.セールスイネーブルメントの成功事例
    1. 5.1.営業活動の効率化
  6. 6.セールスイネーブルメントを実現するための手法
    1. 6.1.経験者の採用
    2. 6.2.外部のコンサルタントに依頼する

セールスイネーブルメントとは?

セールスイネーブルメントとは、営業活動において中長期的かつ継続的に成果を挙げることを目的とした、営業組織の強化や改善ための総括的な取り組みのことです。


(出典:SATORI「【図解】セールス・イネーブルメントとは?事例で具体的な営業最適化を学ぼう


セールスイネーブルメントは、以下のような営業組織の強化、改善のための取り組みを総括的におこないます。



従来の営業組織では営業担当者の研修は人事部、営業ツールの開発はシステム部がおこなうといった、複数の部署にまたがっておこなわれる傾向にありました。しかしそれでは、取り組みに対する認識の共有がしにくい、人事評価がしにくいといった課題を感じる企業も出てきました。
 
これらの分散していた活動を統合させる動きに繋がるのがセールスイネーブルメントです。セールスイネーブルメントの導入により、俯瞰的に効果測定ができるようになりますので、施策ごとの成果を数値で評価し、PDCAサイクルを迅速に回しながら営業活動の最適化につなげることができます。
 
営業組織の強化や改革を目的にセールスイネーブルメントに取り組む場合は、専門部署を設けることで、取り組みに注力できます。リソースが足りないなどの理由で専門部署の設立が難しい場合は、取り組みに関連する部署から担当者を集め、一時的な組織として運用する方法もありますので検討してみてください。


セールスイネーブルメントが注目されている背景

営業組織の強化や改革のための手法は多くありますが、中でも近年、効果的な取り組みとして注目されているのがセールスイネーブルメントです。ここでは、セールスイネーブルメント市場の現状と、注目されている背景を解説します。



セールスイネーブルメントの市場

セールスイネーブルメント市場規模は近年大幅な成長傾向にあります。Research and Markets社がおこなったベンダーの売上金額を対象とし、3月期ベースで市場規模を算出した調査によると、セールスイネーブルメント市場は2016-2022年の間に年10%以上の成長率を継続しています。また、2022年度の売上金額は22億円と推定され、2022-2030年の年平均成長率は 23.7%に上るとも言われています

(出典:Senses Lab.「セールスイネーブルメントとは?意味や事例・運用方法を紹介」)

これらの結果より、今後もセールスイネーブルメント市場には多くの企業が新規参入すると想定でき、比例してセールスイネーブルメントを導入し営業強化する企業自体も多くなることが考えられます。


働き方改革

セールスイネーブルメントが注目される背景には、国策でもある「働き方改革」が後押ししているとも考えられます。セールスイネーブルメントは営業活動の効率化につながるといったメリットがあり、働き方改革で掲げる「長時間労働の是正」「ワークライフバランスの実現」にも効果的です。
 
働き方改革に関するアンケート」では調査対象全体の7割の企業が働き方改革に取り組んでいる、という結果が出ており、前向きに働き方改革に取り組む企業は多く増加も考えられるでしょう。働き方改革の推進を目的に、セールスイネーブルメントの導入を並行して検討する企業も多くなるのではないでしょうか。

(出典:PRTIMES「7割以上の企業が「働き方改革」を実施。「若い世代の定着のためには、働きやすさが不可欠」「働き方改革と生産性の向上を両輪で進めていきたい」の声」


商品の変化

BtoBビジネスでは、取扱い商材が有形商材から無形商材へシフトしている傾向にあり、SaaSやMaaSなどのサブスクリプション型のコンテンツやサービスを取り扱う企業も多くなりました。
 
このような市場の変化に伴い、営業活動においても顧客課題の収集を軸とするソリューション営業が主となりつつあるため、営業担当者はより高い営業スキルを求められています。自社商材を理解し、効率的な営業活動をおこなうための取り組みとして、セールスイネーブルメントが検討されることも多くなったと言えます。


リードの質と量が向上してきている

WebマーケティングやMAの普及や導入する企業が増加したことにより、顧客の意欲や購買行動の情報を詳細に追求できるようになりました。そのため、従来と比較して質の高いリードに限定し獲得できるようになったとも言えます。
 
リードの質や量が向上している状態に適応するためにも、営業活動内容のレベルアップが重要になってきます。せっかく獲得した質の高いリードに対し、営業担当者が適切なアプローチができない状態では、受注につながりづらくなってしまいます。営業活動の質強化、また効率化のためにもセールスイネーブルメントの導入が必要とも言えます。


なぜ、セールスイネーブルメントが必要なのか?

セールスイネーブルメントは多くの効果やメリットが得られるとともに、人材育成とは異なる観点から営業組織の強化や改革につながります。顧客の課題解決を軸とした営業活動をおこなうためにも、セールスイネーブルメントが必要です。


セールスネーブルメントで見込める効果とメリット


ここでは、セールスイネーブルメントがもたらす「営業活動の効率向上」「売り上げ増加」の効果やメリットを解説します。

【営業活動の効率向上】

セールスイネーブルメントでは営業担当者のトレーニングや教育を実施します。営業担当者の知識やスキルを向上させることでリードの追跡からクロージングまでのプロセスをスムーズに進められ、営業活動での無駄な時間を大幅に削減できる効果があります。


 
【売上増加】

セールスイネーブルメントによって営業担当者のスキルや知識が向上し、より効果的な営業活動をおこなうことができれば、結果として売上の増加につながる可能性が高まります。顧客との信頼関係を構築するためのスキルを向上させ顧客のニーズを随時収集し、ニーズが高まる適切なタイミングでアプローチをおこなうようにできれば、提案が成功する確率も高まるでしょう。


セールスイネーブルメントと人材育成の違い


営業活動最適化や営業担当者のスキルアップへの取り組みは、人材育成でもセールスイネーブルメントでも実施します。人材育成とは営業担当者個人の知識やスキルアップのためにおこなう手法や取り組みそのものを指すのに対して、セールスイネーブルメントは営業組織全体の仕組み化・最適化を指します。セールスイネーブルメントは方法や手法と誤解されやすいため注意しましょう。


セールスイネーブルメント構築の4つのステップ

セールスイネーブルメントの取り組みを始めたくとも、何からはじめるべきか、その工程が分からない、という方もいるかもしれません。セールスイネーブルメントは、大きく4つのステップで構築を進めます。


(出典:Salesforce「セールスイネーブルメントとは?概念とツール・事例まで解説」)


ここでは、セールスイネーブルメントを構築するための4つのステップを順に解説します。


営業データの収集と整備

まずは営業担当者の営業活動や顧客、受注や成約状況に関するデータの収集と整備をおこないます。営業データは、後のステップで出てくるトレーニングプログラムの構築に必要なためです。
 
SFAやMAなどツールを導入し、営業フローの設定、管理する営業活動項目の設定、マネジメント層がリアルタイムで管理できる環境を整備しましょう。ここでの重要なポイントは、データの共有が容易にできるようにすること、KPIなどの指標を確認しやすいようにすることなどです。継続的に実行できるか、誰が見てもわかりやすいかに注意し、環境を整備していきましょう。


セールスイネーブルメント構築を担う人材のアサイン

セールスイネーブルメント構築を担う人材を配置します。営業ノウハウを保持し、商談時のロールプレイングがおこなえるなど実践的なスキルを共有できる人材をアサインしましょう。人材が社内で確保できない場合は専任を採用するか、または外部の専門企業に依頼するという手段があります。自社の状況に合わせて検討しましょう。


トレーニングプログラムの開発

セールスイネーブルメントでは、実践型のトレーニングプログラムを組み、人材育成をおこないます。トレーニングプログラムは従来の研修やOJTで学ぶ内容とは異なり、実際の現場の課題に即した実践的な内容となっているのが特徴です。
 
パフォーマンスの高い営業担当のデータを分析してトレーニングプログラムとして開発すれば、他の社員にも活かせます。プログラムの実施内容は現在の企業規模や営業指標により異なるため、定期的な見直しと改善、実行を繰り返すことで理想的なプログラムの構築にもつながります。
 
プログラム実施後、効果検証をするために営業活動の成果や行動などのデータ、トレーニングプログラムを実施したメンバーや日付などの履歴を残しておきましょう。データや履歴は、後々のトレーニングプログラムの改善に役立ちますよ。


PDCAサイクルの策定

トレーニングプログラム実施前後のデータを比較し、効果を検証します。実施したプログラムの内容と得られた効果をマネジメント層と共有し、必要に応じて改善をおこないPDCAサイクルを回しましょう。
 
PDCAサイクルを回す仕組みをフロー化するなど事前に構築しておけば、育成する担当者スキルに依存することもありません。またPDCAサイクルを迅速に回すことができるようになるため、効率よく営業組織の強化につなげられるセールスイネーブルメントの実行が可能となるでしょう。


セールスイネーブルメントの成功事例

セールスイネーブルメントを取り入れることで、営業活動の効率化や営業成果の向上などのメリットが得られます。実際にセールスイネーブルメントを導入し、成功した事例を紹介します。


営業活動の効率化

セールスイネーブルメントを取り入れることで、営業活動の効率化につながります。クラウド名刺管理サービスを提供するSansan株式会社では、ベンチャー企業のため新規採用した営業担当者をできるだけ早く営業の前線に立てるように育成したい、といった課題を持っていました。そこで営業メンバーの教育システム構築を目的にSFAツールの再定義と再整備をおこなうセールスイネーブルメントを導入しました。
 
施策導入後、案件終了までのフェーズを細分化し同一のプラットフォーム上で共有できるようになり、営業メンバーの独り立ちまでのプロセスの効率化に成功しています。



セールスイネーブルメントを実現するための手法

セールスイネーブルメントを実行する方法には、「経験者の採用」または「外部のコンサルタントに依頼する」の2つがあります。具体的な方法について解説します。


経験者の採用

セールスイネーブルメントの構築を内製する場合、「経験者の採用」をおこなうことが必須となります。セールスイネーブルメントを取り入れるためにおこなうべき工程は、前述した4つの構築ステップの他、新しいツールの導入や変更される業務内容の共有や、セールスイネーブルメントの理解のための研修、KPIの設定や評価基準などの評価制度の整備、蓄積したノウハウの共有と、やるべき事が多いです。
 
すでにセールスイネーブルメントの取り組みへの経験を持つ人材を採用すれば、社内でセールスイネーブルメントを内製できる仕組みや組織のスムーズな構築につながります。


外部のコンサルタントに依頼する

セールスイネーブルメントを内製化しようとしても「経験者がなかなか見つからない」といった課題から、組織や仕組みの構築が進められないといった課題を抱える企業もいるかもしれません。実際、セールスイネーブルメントは成長市場ではあるものの、これから実践する企業が多くなると予測されるため、現段階で経験者を探すのは少々難航することも考えられます。
 
社内でセールスイネーブルメント構築をおこなうことが難しい場合は、外部のコンサルタントに依頼する方法が有効です。キューアンドエーでは、各種BtoB営業支援サービスをご提供しております。セールスイネーブルメント導入のためのSFAやMAツールを導入したデジタル基盤の構築をはじめとした支援サービスをご用意しました。将来的にセールスイネーブルメントを内製化したいときの支援も可能です。ぜひお気軽にご相談ください。



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キューアンドエー株式会社   坂倉 秀太
キューアンドエー株式会社   坂倉 秀太
複数のコンタクトセンター責任者を経て、キューアンドエーに2018年中途入社。 ICT(「情報通信技術」)に特化したコンタクトセンターとオンサイトサポートをメインに、大手クライアントのインサイドセールスプロジェクト責任者としてデジタル基盤から体制までを一から立ち上げる。 中期計画にて自社事業、提供サービスの展望を望み、 セールス領域で他企業と差別化できるデジタルマーケティング、 インサイドセールス確立を見据えプロジェクトを推進している。